ちくわ天ブログ

オタク報告

「そうです。あのコが僕の畏敬する天使様なのです」

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いくつ当てはまりました?

私は〜3つかなあ…。

 

名作エロゲ『さよならを教えて』をクリアしたのでその話をします。

もう20年前のゲームなのでネタバレしちゃいますけど、個人的にはオチを知っててもやって楽しめる作品だと思います。

 

少し前に岩倉文也の短編集『終わりつづけるぼくらのための』を読みました。元々好きな詩人なんですけど、これは色んな「終末」観を描いた散文って感じで、終わりについてくる寂しさとか終わり続けているどうしようもなさみたいな感情がなめらかで短い物語になってます。

多分美少女ゲームのバッドエンドとかノーマルエンドみたいなものなんだろうなと思いながら、実際自分が美少女ゲームの文脈に全然触れていないなと思い、どうせなら名作をやろうと思いました。DLsiteで3000円弱。安すぎる。

 

さすがに有名なので私もなんとなくオチは知っていました。が、それでも細かい設定まわりは知らないので普通にこれ何?みたいな楽しみ方はできました。

 

怖くはない わりと癒し

なんかグロかったり怖かったりするイメージが先行してたんですけど、主人公が狂っているっていうだけで全然不必要な怖さとかは無かったです。

主人公・人見広介の独白がなんかおかしかったり、チャイムの音がどんどん変になったり、選択肢にない発言をしたり、選択肢が全部同じだったり、テキストが変に繰り返されたり、背景のグラと場所を指すテキストが合ってなかったり、ヒロインの立ち絵がいきなり全裸になってたり、色々有名な演出でおおとなるものの、ゲームとして理不尽さとか意味が分からない怖さを感じる要素は無かった。

ぶっちゃけ昔のゲームでカルト的人気がなんちゃらってやつだいたい「ストーリーが理解できない不気味なもの」が多いじゃないですか。

そういうのに比べると全然分かるストーリーになっているので、想像してたよりも遥かにやりやすかったです。

 

人見広介

人間失格』を読んだオタクのみんなはきっと「この大庭葉蔵ってやつ俺に似てるわ」ってツイートしたと思うんですけど、人見先生もわりとそんなとこあると思うんですよね。

さっき癒しって言ったのは、この人見先生のキ◯ガイっぷりが常人にも理解できる部分をいっぱい持っているからだと思います。

基本的に檻の中の珍獣を眺めているのに、時々垣間見える人間らしい卑屈さとか言いようの無い絶望感にものすごくピンポイントに感情移入してしまうんですよね。

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エンディングの回収のために何回も見るラストシーンですけど、この辺りになるともう…ウオーこの愛すべきキ◯ガイ!みたいな感情になってしまう。このくだりは大好きな一節ですね。この気持ちはとてもよくわかる。

このゲーム、やればやるほど人見広介という人物への理解が深まってしまうので、下手したらどのヒロインよりも好きになってしまう。この人見先生の歪みっぷりが何とも言えない絶妙なダメ人間の魅力そのもので、だんだんクセになっていくんですよね。癒し。彼の狂気はメンヘラとかじゃなくてガチもんなので、アンサイクロペディアでは精神医療シミュレーションゲームと紹介されてますね。

 

音楽

音楽がとにかく良いですよね。音楽が良いってどういうベクトルなのか説明が難しいんですけどね。

個人的にはやっぱり「流れとよどみ」が1番好きで、作中のどこで流れても違和感が無いのに印象が強くて、あの永遠の夕焼けの絵とマッチした不気味な心地よさがずーーーっと続く感じ。癒しだな。私も日報を書く時は頭の中で流れとよどみを流しています。

 

ヒロインについて

性癖で言うと実は目黒御幸ちゃんが好きなんだけど、私もまた自分に似ている可哀想な女の子に大きく出ることしかできない童貞なのかもしれません。
巣鴨睦月ちゃんは…本当に可愛いですね。個人的にはあの妄想の中の女生徒「巣鴨睦月」、現実で病院にいる「巣鴨睦月(=天使様)」なのかなあと思います。それはそうなんだけど。結局現実に存在する美少女は人見先生からすると「畏敬する天使様」なのかなあと思ってます。怖いよね。

これはめちゃくちゃな偏見なんですけど、美少女ゲームっていきなり確信に触れてくる女が強いと思うんですよ。もうめんどくさい世話話とかプロフィール的なところを一瞬で終わらして、「生きている実感がまるで無い」とか「明日の生活よりも今降っている雨がどこで途切れるかの方が気になる」みたいな根本的な人生や人間性のはなしをしてくれるような…。

それで言うと妄想のヒロイン達はわりと人見先生向けというか、人見先生が好きそうな話をね、いっぱいしてくれてるわけじゃないですか。すごく良い構い方をしてくれると思うんですよね。全部人見先生の妄想なんだからそれはそうなんですけど。

でも巣鴨睦月だけはやっぱちょっと違うんですよね。確信に触れるようなことは言うんですけど、全体的に話ができない(そもそも声が聞こえない)感じとか。その辺の巣鴨睦月というキャラクターの完成度はすごいなあと思います。上手く言えないけど。

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天使様のフィギュアめちゃくちゃ良いですよね。美術の教科書に載せた方がいいよ。

 

救いが無くてもいい

エヴァンゲリオン観ました?自分はかなり映像的な迫力もクソデカ物語の終わりとしても良かったなって思うんですけど、やっぱりどこか「結局これなのか」と思わなくもないんですよね。

人見先生は精神病院に長いこと入院している病人で、自分のことを教育実習生と思い込んで妄想の女の子に欲望の限りを尽くす悲哀の狂人なのですが、

結局自分を騙すための幻覚もだんだん現実と混ざっていって、物語の最後には自分が病院のインターンとして働いているという次の妄想を始めます。

全部妄想なのに自分を追い詰めるようなシチュエーションばかりなのも悲しい。

それぞれのヒロインのルートで人見先生の生い立ちや生まれ持った性癖が垣間見えるのですが、そこを踏まえるとますます救いが無くて鬱屈とした気分になります。

でもそこがいいんですよね。

なんていうか、一周回ってこの狂気の行く先としてすごく腑に落ちるし、逆にこれで良かったんじゃないかと思うんですよ。

多分現実に戻って巣鴨睦月と再会して色々しんどいけど頑張って生きようみたいなのは…真っ当かもしれないけど、なんか…辛いだけなんじゃないか……?

最後のとなえとの会話もベタだけどいかにも後味の悪い話って感じで大好きです。

救いが無くても人見先生の頭の中に人見先生の救いがあるならそれでいいと思うんですよね。相似形が見つからなくても大丈夫!

アンドロイド版もあるらしいです。

 

上野公園にいたおじさん

こういうのかなりガチっぽいじゃん。

 

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おわり。